『世界で生きるチカラ』 坪谷ニュウエル郁子著

本

 

たまには、教育関係の話でも。一応教育系のマスターを出てるので修論が一本、共同論文も含めると2本あります。もうすっかり論文の書き方も忘れました(笑)94年の武蔵野音大の紀要に載ってますので、興味のある方はどうぞ。辻有里香で論文を出してそのままこの名前で仕事をしています。もう20年も前の論文なので今ではすっかりガラパゴス化していることまちがいなしです。

教育学ってものすごく幅広くて、心理学、教育史、授業研究、教材研究、音楽心理などなど、大学4年とマスター2年で6年間学びます。人間が成長していく過程を知る学問なので、ものすごく面白かったです。勉強ができるからいい先生に成れるとは限らないと思うのですが、勉強してよかったなと思います。いまだに、そういう系の本を見るとつい買って読んでしまうのですが、この本はそういう堅苦しい本ではありません。「国際バカロレア」という言葉さえ聞いたことがなかったのですが、未来の教育システムとして提案されているものだそうです。その国際バカロレアについて、分かりやすく解説してある本です。未来の教育システムといっても、もちろん今も世界中でこのカリキュラムで学んでいる学校も多数あり、日本では東京インターナショナルスクールや学芸大学付属や玉川学園で学べるそうです。

今世界が注目している21世紀スキルというのがあるそうです。

①創造性と革新性②批判的思考・問題解決・意思決定③学び方の学習・メタ認知④コミュニケーション⑤協働(チームワーク)⑥情報リテラシー⑦ICTリテラシー⑧地域と国際社会での市民性⑨人生とキャリア設計⑩個人責任と社会的責任

こういう21世紀スキルを身につけさせるのに適したカリキュラムで、日本語でも学べるそうです。日本のカリキュラムも学びつつ、それに添って授業が行われている例もいくつか載せてありました。評価が世界標準になっていて、外国の大学を受験するときにこの評価も参考にしてもらえるそうです。

とまあ、概念ばかり読んでもイマイチ理解ができなかったのですが、具体的な授業例があげてあり、日本史の授業だったら、4月にシラバスが配られて、日本では検定教科書を全て読んで予習し、一番興味のある時代や事柄を抜き出し、自分が探求するテーマを決めるそうです。研究結果を論文にしたりプレゼンテーションしたりして、クラスのみんなとディスカッションして、先生から評価をいただくというシステムだそうです。

すごいですよね。これほぼマスターの時に私がやった勉強方法です。教育書だったらとりあえず全部一冊まず読まされて、そこからサマリーを書き出してクラスメートに配りプレゼンテーション→ディスカッション。で、それが私の成績評価という授業でした。教科書も、先生がプリントにどひゃあああああって著作名が書かれてあるものを配って、「どれでもいいです。一冊読んできてください。」みたいな授業でした。これを高校生でやるんだと、それは力がつくだろうなあと思うと同時に、向いてる生徒と向いてない生徒がいるはずだから、やっぱり今までどおりの、先生が授業やって覚えるのが好きな人はそういうカリキュラムを、バカロレア方式が良い生徒は、その方式でどんどん研究していくという感じでいいのかなと思いました。ただし、著者の方も書いていらっしゃいましたが、どちらの授業もすべての子供達が選択できるように、公立学校でもっと取り入れて欲しいというご意見でした。確かに!一部の私立やインターナショナルや国立の子どもたちが主に選択しているだけよりは、もっともっと広く取り入れられてもいいかもしれません。

問題点として、教育機関がどんどん今までの授業と違うものを取り入れても、就職先の周りの人がその人のことを「使える人だ」と思うか、それとも思わないのか、微妙だなとも思いました。でも、国際的に求められている人間像がかなりこの本を読んで分かりました。私自身がこれから海外で活躍することはないと思いますが(笑)、音楽をやっていれば、海外で活躍ということはこれからの生徒は出てくるかもしれません。その時に、求められている人間像はこういう感じなんだなと。

それにしても、上記の①から⑩まで、音楽を学んでると身につく能力多いなと思いました。自分の演奏に対する正しい認識(メタ認知)、どの曲だったらどのくらいの時間があれば仕上がるのか、どう練習していけばいいのか(設計)、他の人の演奏を聴いて自分の求めている演奏と合致してるのか、それとも違うのか(批判的思考)、ネットで色んな人の演奏が聞けて勉強できて(ITリテラシー)、なかなか仕上がらない時はどんな解決方法があるのか(問題解決)合奏するときには相手と音楽を作り(協働)などなど。音楽を教えるという仕事に従事していて、国際人を作っているんだという誇りが持てそうです!

もしご興味がある方は、是非ご一読を。

 

 

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